君に甘やかされて溺れたい。


「全然かわいくねぇし!!むしろブスだし!!」

「ちょっ、猿渡、後ろ」

「……」


 友達とのそんな会話を偶然立ち聞きしてしまった。


「み、未波……」

「……っ」

「お、おい!待てよ!」


 私はその場から逃げ出した。

 悲しくて悲しくて、自室にこもって一人で泣いた。

 両想いかもしれないって思ってたのは、私だけだったんだ……。
 全部勘違いだったんだ。

 それから卒業するまで猿渡くんと話すことはなかった。

 現実は甘くない。
 アイルくんみたいな王子様は存在しない。

 だったらもう、恋なんてしたくない。

 そう思っていたのに、現実にも王子様が現れた。


* * *


「ねぇ紅ちゃん、アイルくんってちょっと僕に似てるよね」


 え、それ自分で言っちゃうんだ。


「アイルくんにあって僕にないものってなんだろう?」

「え、なんだろう……?」


 てゆーかどうしてそんなこと聞くの……?


「どうしたら紅ちゃんの王子様になれるのかな」


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