まるごと大好き!
 ……なんでそこまで思い出すの、私の大間抜け。
 腕時計を見ると、そろそろ行かなきゃ遅刻する時間だ。思考を切り替えろ。私にはやらなきゃいけないことが山ほどあるでしょう?
 私はゆっくり立ちあがって、3階までの階段を一気に登った。

「静波ちゃん」
「あれ、かなえだけ?」

 生徒会室のドアを開けると、いるのは書類の整理をしているかなえだけだった。

「副会長と書記は面談で遅れるって」
「ああ、そっか。今週からか」

 高校2年生の秋だ。進路に関しては重要な、大詰めとも言える時期。生徒会活動に支障が出てしまっても、彼らを責められない。
 特にあの2人はどちらも大学受験を控えている。というか、生徒会の役員たちはみんな受験する。私も海外留学ができる医大を目指して、中学のときからがむしゃらに勉強も運動も生徒会活動もがんばってきた。

「静波ちゃんは面談いつ?」
「来週か……遅くても再来週かな」
「私も同じくらい」
「今のうちに先生に言っておこうか」

 面談は出席番号順──あいうえお順で回ってくる。私やかなえはか行だから、わりと早めに順番がくる。昂志もそうだ。
 私は頭を横にふった。強めにふったものだから、ちょっとクラクラする。

「静波ちゃん?」
「ごめん、考えごと」
「木城くん?」
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