まるごと大好き!
 ホワイトボードを準備する手をとめて、私はつばを飲みこんだ。

「あいつ、いつも面談に来なくて先生を困らせてるから……」
「それは困ったね」

 かなえは小さく首をかしげた。お下げがさらりとゆれる。

「でもそうじゃないよね、今考えてたの」

 ぎくりとした。
 かなえはいつものおっとりとした空気だ。でも私は知っている。けっこう……いやかなり鋭い子だというのを。
 クルミのような丸い目と、少したれた眉に、なにが起きても冷静な話し方。
 「一緒にいると落ち着く」「ずっと前に流行ったあれじゃね、癒し系」と同級生たちに言われているけど、仲良くなれば、それだけの子じゃないとすぐにわかった。

「木城くんも静波ちゃんと同じ気持ちだと思うよ」

 私は目を細めた。それはない。それだけは認めたらいけない。
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