まるごと大好き!
 この仕事は廻に紹介してもらった。
 あいつの交友関係は正直すげぇと思う。どうやってマトモな大人と知り合って、仲良くなれるのか。俺はいつもわからなかった。
 ……今思えば、中学のときからいろんなやつと知り合いだったな。
 中学を卒業し、新聞配達やめてから紹介してもらったこの仕事は、もとは廻ががんばっていた。
 金はもらわずに、メシだけもらってたというから賢い。「手伝いをしてるだけ」と言い訳ができる。それでもいい顔はされないが。
 あいつも教師から目ぇつけられてたのに、とんでもない度胸がある。モノズキ、とか言うやつだ。静波がそう言っていた。
 そもそも俺に関わらなきゃ目ぇつけられなかったのに、あいつは俺にケンカを売ってきたやつらに消火器をぶっぱなし、トリモチだのオイルだのをぶっかけて、俺を助けた。
 静波もだ。
 俺と話してたら完璧な生徒会長の経歴にキズがつくぞ、と嫌味を言ったことがある。過去に戻れるなら、戻って中坊の自分の胸ぐらをつかんでやりたい。
 静波は怒ったり悲しんだりしなかった。
 ただ「みくびらないで」と笑ってみせた。
 その笑顔がカッコよくて、眩しくて。
 そのとき、俺は彼女への恋心を自覚した。
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