危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
 
 すみれに名前を呼ばれると、甘く胸が疼く。誰にも入れたくない領域にすみれにだけは入ってきてほしい。 

 その前に最低の告白をしなければならない。
 蓮は宝来家を不幸にするためにやってきたのだ。黙ったままではいられないが、すみれに父親の疑惑を言うのはどうしても憚られた。
 家を出たからといって親子の縁が切れるわけではないし、悪いところがあるからといって心の底から嫌いになれるわけではない。親子とはそういうものだ。

 まずなにから話せばいいか、すみれを傷つけずに事実を告げることはできず、ためらい続けている最低な状況だった。

 週末、蓮のマンションに泊まったすみれを送ろうと二人で部屋を出ると、義姉の麻美がマンションの前にいた。

「蓮。話があるの」
「ごめん、今話せない」
「あの……私一人で帰れるから」

 すみれが気を使って、その場を去ろうとする。
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