危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

6章

罪悪感

 仕事は辞めることにし、辞表も出した。心の中にまだ燻っているすみれの父親への怒りや憎しみを封じ込めて、すみれといることを選んだ。
 北田には、自分は計画から降りると告げたが、北田自身はビジネスだからやめる気はない。遠くない将来、宝来正道を大臣の座から引きずりおろすつもりで取材を続けているようだった。
 日本の政治を変えるのは、なにも選挙だけじゃない。文字の羅列だけでも記者は歴史を変えることもできるのだと、いつか北田は笑っていた。
 そうなればすみれも当然影響を受ける。自分が集めた証拠はまだ北田に渡していない。

 すみれのひたむきで献身的な愛は、孤独の淵にいた蓮を暗い場所から引きずり出してくれた。本人にはおそらく自覚はないし、伝えることもできていないが、まっくらな場所に一人取り残されたままの蓮の一部にすみれが手を差し伸べてくれたような気がしていた。
 すみれもまた、愛情に飢えていた。すみれがくれる何倍もの愛情を捧げたい。そうしていつも不安そうで心もとない顔をしているすみれを安心させてやりたい。
 それなのに、ただ好きだと言う言葉すらまだ言えずにいる。
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