危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 ──なんて悲しい物語。

 ここまで読んだ時はそう思った。けれど物語には続きがあった。
 
セラは森の番人にリッケにもう一度会いたいと言い、番人はセラに命を差し出す覚悟があるかと訊く。

「お前を助けるために、リッケは自分の命を使った」

それを聞いたセラは、リッケのためなら自分の命も惜しくないと答える。番人はなにかを決意するようにセラに魔法石を返した。その瞬間、手にあった魔法の石が明るく輝き始める。石が光り、森中が閃光に包まれリッケが現れた。
 石はその力を使い果たし、静かに消滅する。

セラとリッケは互いを強く抱きしめ、再び出会えた奇跡に涙を流す。

「暗い話だったんだけど、少し気が変わって書き直したの」

 絵本のことを訊ねると、ママは少し照れくさそうにそう言った。

 今夜は、二人の結婚記念日だ。
 ママが呼ぶ声が聞こえて、絵本を本棚に戻して、二人の待つリビングへと向かった。

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