危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

「すみれ、最近身辺が騒がしい。一人で出歩かないように」
「はい」
「念のため少しの間、お前の送迎を片桐に任せる」

 その言葉にすみれは驚いた。
 大臣である父には、SPが常についているが、すみれには警護などついてない。だからといってそこまでやる必要があるのか。

「片桐さんに? そこまでしなくても……。遅くなる時は、タクシーを使うから大丈夫よ」

 秘書は片桐だけではもちろんないけれど、仕事はかなりの激務ですみれの送迎に時間を使えるとは思えなかった。

「知っているだろう。最近党内の政治家の家族が刃物で刺される事件があった。ただの脅迫状と油断しないほうがいい」

 いつになく深刻な顔で言われる。 

「では、極力気を付けます」

 話していると、部屋をノックする音がした。父が応じると、

「失礼します」

 ちょうど片桐が来た。どちらかといえば苦手な彼に送迎されると思うと、気軽に出かけることもできなくなる。
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