唇から始まる、恋の予感
白石とのことをいいように考えていた俺は、見事に全てがマイナスに出てしまっていて、落ち込むばかりだった。どうしたらいいか全くわからず、悶々としていた。
五代が帰国の慰労会をしてやると言っていた日が今日で、少しは気が晴れるかとワインを持って五代のマンションに来た。

「いらっしゃい」

笑顔で出迎えたのは、秘書であり五代の恋人である水越だ。

「お招きありがとう」
「どういたしまして、といっても私は何も作ってませんけど」
「いいんじゃないの? 五代は料理が得意だからやらせておけば」
「そうですか? 少しは何が出来たほうがいいかなと最近は思ってるんですけど」

前向きなのはいいことだけど、水越はお茶漬けしか出来ないんじゃ、五代に満足させられる料理を作るまで相当な時間がかるだろう。 まだ俺の方がカレーライスを作れるだけましだ。
白石は毎日お弁当を持ってきていたはずだから、料理は出来るのだろう。何が得意で、何が好きなんだろうか。

「必要になればするようになるんだから、今はいいでしょ、甘えてなよ」
「同じことを言ってます、社長と」

くるくると表情が変わって、美人なのに気取りがなくて感じがいい。聞くところによると非公式のファイブスター美人ランキング1位で、殿堂入りしたらしいが、俺が投票するとしたら白石に一票だ。それを本人に分からせるにはどうしたらいいのだろう。



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