ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
3人でにらみ合ったまま数分が経ち、空気を読んで声をかけてきたCAさんとハサンが何か話している。
どうやら現地の言葉らしく何を言っているのかはわからなかったが、すぐにハサンの隣りに新しい席が用意された。
確かに今日のファーストクラスは私たち3人しか乗客がいないから席を移ることもできなくはないけれど、スタッフのスピーディーな対応を見ているとハサンはやっぱりVIPなのだなと感じた。

「さあ凪、用意ができたからこっちにおいで」
「え、ええ」

席のセッティングも終わり、いつの間にかテーブルに置かれたチャイからは温かな湯気が上がっている。
どうやらハサンが頼んでくれたらしい。

「女は怖いな」

私にだけ聞こえるボリュームでつぶやかれた元カレの言葉が胸に刺さったけれど、今は聞こえないふり。
私は元カレの方を見ることもせずに、席を移った。
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