ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
本当の王子様
トイレと呼ぶにはあまりにも広いファーストクラスのレストルーム。
小さな個室のようなスペースにはソファーがあり、そこで着替えたり身だしなみを整えることができるようにもなっている。
機種によってはシャワールームも備わっていると聞くが、この機体にはないようだ。
搭乗する前にラウンジでシャワーや仮眠をとったからここでシャワーを浴びようとは思わないけれど、その豪華さはやはり群を抜いている。
どうやらここは非日常の空間らしい。

「酷い顔」

泣いてしまったためにすっかり落ちてしまったっメイク。
真っ赤になった目や鼻も腫れてしまった瞼も見るに堪えない状態だが、どうすることもできない。
私は泣きはらした目を冷やすために顔を洗い、タオルで顔を拭いた。
決して余所行きの顔ではないけれど、今はマスクでごまかすしかないだろう。
ハサンに対しても、ここまで醜態をさらしてしまったからには今更取り繕う必要もないはずだ。
私はスッピンになった顔を見ながら、どこか吹っ切れた思いで座席へと戻ることにした。
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