「みんなで幸せになると良いよ。」
「髪伸ばしたら可愛いのに。」

野田さんは初めての会話でそう言った。

お世辞だってことぐらいわかってた。

それでも嬉しかった。

あたしは佐紀ちゃんみたいに裕福じゃない家で生まれた。

小学校のとき、なんとかバレエだけはって母親が入れてくれた。

だけど、母親はあたし中学生になる前に出て行って、

父親と二人で暮らしてた。

中学2年のとき父親がアルコール依存症になったの。

暴力から身を守るために空手を覚えた。

美術部をやめて、中2の夏から空手部。

自分で自分の身を守らないとって思った。

帯の色が良くなるころ、父親は突然消えた。

死んだのか、生きてるのか、それも知らんまま。

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