「みんなで幸せになると良いよ。」
逃げ続けることを決めた街にわずか2.3年で帰ってきた。

「大丈夫、仕事が忘れさせてくれる」

そう信じていた。

幸運なことに大学までは1時間かかるほどの距離に病院があった。
病院から15分くらいの場所に事務所を借りることが出来た。
いつから仕事を再開しようかと友人と話し合った結果、まずは自分の身辺整理を済ませようという話になった。

引越しやら手続きやらを一通り済ませて、生活のリズムが出来るまでゆっくりしようということで落ち着いた。

本当は事務所が使える日から再開したかったけど、友人の母親のことを考えると僕の意見は提案してはいけないものだった。

アパートも住民票の書き換えなどもすぐに終わってしまったのであと何日か何週間かは時間を潰さなければならない。

浴衣姿のおばちゃんが安っぽい団扇(うちわ)で扇ぎながら、向かいの歩道を歩いていた。坂を上がった先にある神社で夏祭りがあるのを思い出した。
今日が最終日だということを商店街のノボリを見て知った。



誰かつかまるだろうか。
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