「みんなで幸せになると良いよ。」
笑顔はあまり見せなくなったけど、それでもヒイラギには前以上の生命力を感じた。
はじめて大学のエントランスで彼女を見たときよりも魅力的で、芯の強い女性に見えた。

長くなった髪のせいかもしれない。
「僕が助け出した。」そう思っても良かったのかもしれないけど、傷つけたのも僕だから英雄気分には決してなれなかった。

それでも、心持の悪さもなくなったことを心のなかで僕は喜んでいた。


『どうしたん?考え事?』


覗き込んだ彼女は無表情、でも確かに前以上にしっかり立っている。


「うん。この間までのヒイラギってなんか薬キマった感じがしてたなぁって。」


普通はこの手の話はもう少し時間をおくべきだと思う。



不用意。
< 96 / 266 >

この作品をシェア

pagetop