学生寮
ふいに後ろから声をかけられて振り向くと、さっき話題に出たカケルが友人達と店に入ってきたところだった。


白いシャツにブラックジーンズのラフな格好で肩にギターを担いでいる。


相変わらずやせた体を少し猫背気味に傾け、仲間から離れて笑顔で近づいてきた。


「バンドの練習だったの?」


「おう」


私達のそばまで来ると、カケルはポケットからチケットを取り出した。


「なあ、今度の土曜ライブやるんだけど、おまえら来ねえ?」


裕子が、どうする?と私を見た。


「まだ夏休みの課題が残ってるから、私はパス」


私は即答した。


すると裕子も「みのりが行かないなら行かない」と答えた。


「夏休みまだあと1週間もあるんだから、1日くらい遊んだってどうにかなんだろ?」


カケルは簡単には引かなかった。


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