あの駅で君を待つ。
挑発的な彼女を見ていたら、


俺が我慢しているのが馬鹿らしくなった。


「…じゃあ言うけど、君、ここら辺の人じゃないよね。引越し?」


何も答えない。


口を開く気配すらない。


「この駅では、線路に波が到達したから電車が遅れるなんて、よくある事だよ。そんなのにいちいち舌打ちしてたらキリがない」


まぁたしかに30分は長いけど。


今日はそんなに波が高かっただろうか。


「それがもし嫌なんだったら、違う路線を
使った方がいいんじゃない?街の方に行けば、バスも通ってる。」


そこまで言って口をつぐむと、


彼女の真一文字だった口と目が少し弧をえがいた。


「面白いね、あなた。」


面白いねと言われたこと、いつぶりだろう。


ずっと光の付属品みたいなものだったから。


「街までは行きたくないのよ。人がいっぱいいるでしょ?いちいち気遣ってらんない。」


すくっと立ち上がる。


少し目線は下だけど、それでも俺の目を
真っ直ぐ見つめる彼女を見て、思った。
< 8 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop