あの駅で君を待つ。
そう思ったとき、俺のちょうど真上にあった
スピーカーから、


聞きなれたノイズ音が流れ出した。


『…えー、ただいま、線路に波が到達したため、次の電車は約30分遅れでの到着となります。繰り返します______』


またか、と思った。


ここからそう遠くないところでは、少し波が高い日には簡単に線路に波が届いてしまう。


ただでさえ20分間隔でしか電車が来ないのに、


30分遅れとなると、50分か。


舌打ちしてやりたい気分だけど、


俺の他に人がいる中では…


「チッ」


「えっ」


思わず手の中で転がしていたイヤホンを取り落とした。


今、この子が舌打ちしたのか?


今の今までひたすら前だけを見ていたのに、


周りに俺がいるのに、


気にもせずに舌打ちした…?


(こいつ…まじかよ)


「…なにか用」


「えっ」


いつの間にか、彼女がこちらを向いていた。


キリッとした眉毛と目が、
少しだけ近寄りがたさを感じる。


「いや、別に…」


「別にってことはないんじゃない?さっきからすごい視線送ってきて。ちょっと気持ち悪い」


明らかに不機嫌そうな声音。


初対面の人に、よくもここまで言えるものだ。


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