私は大人なあなたに恋をする

HR

小さい頃は人とうまく関われなくても平気だと思っていた。
自分の頭の中の世界はいつだって幸せに溢れていて、 暖かくて春の陽だまりのような優しさだと思っていたから。

けれど現実はーーー


今、私の状況は明らかに冬である。

生徒同士の話し声や笑い声が飛び交う教室。
まだ何も書かれていない新しい黒板。
先程無事入学式を終えて教室に戻ってきたばかりなのに落ち着く間もなく室内は声と声が飛び交い、絆は思わず耳を塞ぎそうになった。


明らかにこの空気に馴染めない。
私だけ猛吹雪の中に居るみたいだ。

担任の先生はまだなんだろうか。
早く来てこの賑やかさを止めてほしい。
そんな事を考えていると近くの生徒達の話し声が耳に入ってきた。


「ねぇねえ、ウチらのクラスの担任の先生、めっちゃイケメンらしいよ〜」

「マジで!?早く来ないかな〜。どんな感じの先生なんだろうね」



イケメンな先生…か。
そう言えば何年か前に冴えない女の子とイケメンな先生が恋に落ちるっていう内容の恋愛小説を読んだ事があったっけ。


……恋愛。
私だって憧れが無いわけじゃない。
けれど、現実は本の中やドラマみたいにはいかないよね。
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