君が死ねばハッピーエンド
晴れない霧
金曜日。

今日は珍しくスマホのアラームが鳴る前に目が覚めた。

ママがいつも通り呼びにくる頃にはもう制服に着替え終わっていて、ママが死にそうなくらい驚いて見せた。

朔が迎えに来る前に家を出たのは本当に久しぶりだ。

本当は、学校とそれぞれの家の中間地点にある神社の前で待ち合わせするのが約束だった。

私があまりにも遅刻するから、いつからか朔が迎えに来てくれることが定番になってしまった。

“今日は神社の前で”

送ったメッセージアプリにはすぐに既読マークがついて、私はまた驚いた顔のスタンプを送られた。

「おはよ。珍しいな。どうした?」

「どうしたっていうのも変でしょ!ちゃんと起きれたのに」

「うん。えらいえらい」

「でしょ」

「寝不足なわけじゃないよな?ちゃんと寝た?」

「寝たよ」

「ならいいけど」

神社の前で話す私達の前を、同じ学校の生徒が何人も通り過ぎる。

同じ学年の子も居て、そのたびにみんなの視線の先は朔だ。

その見惚れるような瞳に、私はいつも気まずくなる。

朔は本当に綺麗な人間だけど、私は違う。
至ってフツーって感じ。

誰かにはっきり言われことも無いけれど、
なんで私が?
誰もがそう思っている気がして気まずい。

「行こ」

朔から目を逸らして、私が先に歩き出した。

「シイナ?」

「せっかく早起きできたのにまたギリギリになっちゃう」

早歩きの私に、朔が「しーいな!」って言いながら追いかけてくる。

本当は私のことなんてすぐに追い越せるんだって分かってる。
足の長さも歩幅もこんなに違うんだから。

なのに朔は決して私を追い越そうとはしないで、
イジけた子どもをあやすように名前を呼びながら、私の少し後ろをついてきた。

情けない。

私が朔を好きなら、朔も私を本当に好きでいてくれるならそれでいいはずなのに。

勝手に疑心暗鬼になって傷ついて。

見えない敵と戦ったって意味なんか無いのに。
< 23 / 156 >

この作品をシェア

pagetop