ミル*キス
近づくオレを見て、彼女は目を丸くして驚く。


「……どうして?」


いや、それオレのセリフだし。


「……ここ、オレが行ってる予備校」


スミレさんはオレが指差したビルを見上げた。


「そうなんだ……」


っつうことは、オレを待ってたわけじゃないってことか。


それにしても彼女の今日の服装。

ふわっと裾が広がっている柔らかそうな素材のスカートに、五分袖のシンプルなジャケット。

めずらしくメイクもバッチリって感じ。


いつもラファロで見ている姿とは全然違っていた。


今からどこか行くの?

誰かと待ち合わせ?


頭によぎったセリフを口にしようとしたその時……


背後から男の声がした。




「スミレちゃん! お待たせ!」



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