その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 それを腕に嵌め、さあ出ようという時だった。

 ――ミシッという音。

 上を振り向いた瞬間。
 轟音と共に燃え盛る黒い影のようなものが覆いかぶさる。

 一気に紙安の視界、いや意識すらも閉ざされ……それはあまりにも唐突過ぎるこの世界との別れとなる。

 哀れ紙安は推しの幸せを見ることも叶わず、天に召された。
 そのはずだったのに……。



 ――紙安はもう一度目覚める。

 そして世界は一変していた。
 目の前には。

「ようやく起きたか、私の可愛い妹よ」

 かの物語――『輝石(きせき)()ぶ大地』の登場人物。
 今ではフェルメイア王国の宰相を務めるアロウマーク家の若き公爵。
 リューグ・アロウマークの尊き笑顔が現れていたのだ。


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