余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「それは……」


『誘われても断ろうと思う』と言おうとして、視界の中に廊下に立つ人影が見えた。


そちらへ視線を向けると大樹が手を振っている。


萌はとっさに目をそらして気が付かなかったフリをしてしまった。


「大樹、待ってるよ?」


希の言葉に萌は答えられない。


うつむいたまま動くこともできなかった。


「この際ちゃんと聞いてみたらどうかな? 私たちの勘違いかもしれないんだし」


その可能性はほとんどないと思いながらも希はそう言った。


でないと、萌の勇気がでないと思ったからだった。


「そう……だよね?」


萌が少しだけ顔を上げたので、希は笑顔を向けた。
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