余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
余命宣告
翌日の天気は朝から良くなかった。


ジトジトとした雨が降り、院内にも暗く陰湿な雰囲気が立ち込めていた。


そんな中始まった検査は多岐に渡るものだった。


先に先生から説明を受けていたものの、こんなに大掛かりで時間のかかるものだと思っていなかった萌は疲弊してしまった。


すべての検査が終わったとき、すでに外は太陽が傾き始めていた。


雨は相変わらずジトジトと嫌な振り方を続けている。


どうせならスッキリするくらいしっかり振ってくれたらいいのにと感じる。


「こちらへどうぞ」


すべての検査結果が出揃ったとき、深刻な表情をした担当医に別室へ通された。


自分ひとりが結果を聞くのだと思っていたけれど、それには両親も共についてきた。


白いテーブルを挟んで医師と向い合せに座る。


室内にあるホワイトボードにはなにか難しい説明書きが残されていた。


「今日の検査結果ですが、あまりよくない結果になりました」


低く、まるでお通夜のような声色に萌のせすじは寒くなる。


医師がこういう声を出すときはたいてい悪い知らせのときだと決まっている。


「萌さんは肺がんにかかっています」


医師の言葉が室内に漂い、消えていく。


なにか質問したいけれど、なにもできない。


呼吸音と空調の音だけが鼓膜を揺さぶっている。

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