契約婚初夜、冷徹警視正の激愛が溢れて抗えない
2、一日で全部済ませる彼
「莉乃、お茶菓子はこれでいいかしら?」
 キッチンにいた母が私を手招きして確認する。
 母がお皿に用意しているのは、有名洋菓子店の高級クッキー。
 時刻は午後二時五十分。今日は柊吾さんがうちの両親に挨拶に来るのだ。
 一週間前に彼との結婚を決めた私は、その日の夜帰宅すると、両親に早速伝えた。
『お父さん、お母さん、私、結婚する』
 両親は相手が久世グループの創業者一族と知って最初は驚いていたけれど、とても喜んでくれた。まあ、柊吾さんが相手なら断る理由などないだろう。
 馴れ初めを聞かれてヒヤッとしたが、なんとか取り繕った。
『私の推し活仲間の華子さんのお孫さんでね、その縁で会ったら、お互い気が合って、結婚しようという話になったの』
 お互い気が合うというのは少し盛ってしまったかもしれないが、彼も私もお見合いが嫌で契約結婚に同意したのだからあながち嘘ではない。
「多分いいと思うよ」
 正直言って、一度しか会っていない柊吾さんの好みなんてわからない。
 あれから何度か今日のことでメッセージのやり取りをした以外は電話で一回話しただけなのだ。忙しい人だから仕方がない。
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