契約婚初夜、冷徹警視正の激愛が溢れて抗えない
 適当に母親にそう返事をしていたら、父がそわそわした様子でキッチンに現れた。
 ダークグレーのスーツを着ている父を見て首を傾げる。
「お父さん、どうしてスーツなの?」
「久世一族の方が見えるんだぞ。普段着でいられるわけがないだろ?」
 父がかなり緊張した面持ちで答えた。
 ああ。父はK商事の専務。やっぱり出世も気になるし、気を遣うよね。
 落ち着かない父を見ていると、私までだんだん心配になってきた。
 柊吾さんはちゃんと来てくれるかな?
 気が変わって結婚は取りやめにするってことにならないだろうか?
 そんな不安が頭にちらついた時、部外者の和也が偉そうに父に意見した。
「おじさん、久世家の人間ってだけでビビらないでくださいよ。簡単に莉乃を嫁にやってはダメです。大事なのは家柄とか地位じゃなくて、ハートですよ」
 彼はうちの親から今日が柊吾さんが挨拶に来る日だと聞きつけてやってきた。
「大丈夫だよ。柊吾さんとっても優しいの」
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