契約婚初夜、冷徹警視正の激愛が溢れて抗えない
 お願いだから柊吾さんに失礼なことを言わないでよ、和也。
 ジーッと和也を見て目で訴えてもそ知らぬふりをされ、ひとりやきもきしていたら、母がお茶菓子とコーヒーを出し、父の隣に腰を下ろした。
 こういう場合、父が柊吾さんに話しかけるべきだと思うのだけれど、「どうも」と頭を下げただけで沈黙してしまう。
 そんな父を横目で見た和也が、まるで家族代表のような顔で口を開く。
「はじめまして。莉乃の幼馴染の長谷川和也です。今日はなんの用でいらしたんですか?」
 結婚の挨拶に来たと知っているのに、和也は意地の悪い質問を投げた。
「単刀直入に言います。莉乃さんを僕にください」
 柊吾さんは和也だけでなく父や母にも目を向け、落ち着いた声でお願いした。
 しかし、和也の反応は冷ややか。
「なんだろう。心がこもってないんですよね。そんなんじゃあ、莉乃はやれませんよ」
 和也の発言に両親も私も顔面蒼白になる。
 か、和也、なにを言ってるの~!
「和也くん、ちょっと……」
 父が声を潜めて注意しても、和也は平然としていた。

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