契約婚初夜、冷徹警視正の激愛が溢れて抗えない
「はじめまして。久世柊吾です。今日はお時間をいただいてすみません」
 柊吾さんが笑みを浮かべて挨拶すると、母が頬を赤くしながら返す。
「莉乃の母の真奈美です。玄関で話すのもなんですから、どうぞお上がりください」
「お邪魔します」
 柊吾さんが靴を脱いで上がるが、その所作があまりに綺麗で驚く。
 リビングに案内すると、彼が持ってきた手土産を紙袋から出して母に手渡した。
「これ、よろしかったらどうぞ。莉乃さんから皆さんマカロンが好きだと聞いていたので」
 母が「まあ、ありがとうございます」と礼を言うが、その目は柊吾さんをうっとりと見ている。
 そうでしょう。そうでしょう。あまりに美しくて見入っちゃうよね。
 浮かれている母とは対照的に、父はなにも言葉を発さず固まっていた。
 父はまだ自己紹介もできていない。
「柊吾さん、どうぞ座ってください」
 私がそう促して彼と一緒にソファに座ると、父と和也が無言で対面に座った。
 和也が当然のようにいるので、思わずつっこみたくなったけれど、柊吾さんがいる手前なにも言えずグッとこらえる。

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