初恋からの卒業


結婚式前日は色々とすることがあるからと、仕事も特別に休みをもらったと、前にこーちゃんが言っていたけれど。

いくら今日は休みだからって、公園なんて行ってる場合じゃないんじゃない?


せっかくメッセージをもらったけれど、これは全部見なかったことにしてしまおうか。


しばらく悩み、ふとそんな考えが私の頭の中を過ぎったとき、再びスマホが鳴る。


【幸太 : 俺、環奈に会いたい】


「……っ」


私の心臓が、ドクンと跳ね上がる。


『環奈に会いたい』って。明日、自分は結婚するくせに。こんなことを言うなんて、こーちゃんはズルい。


「私が嬉しいって思ってしまうようなこと、そんな簡単に言わないでよ……」


好きな人に『会いたい』なんて言われたら、これはもう行くしかないじゃない。


「絵里さん、ごめんなさい」


そう呟くと私はコートを羽織り、急いで家を出た。

< 18 / 32 >

この作品をシェア

pagetop