だから聖女はいなくなった
 サディアスはその花冠の行方が気になり、それから目が離せなかった。すると、ラティアーナの目尻が下がる。

『ご迷惑でなければ、これをもらっていただけないでしょうか。作ってみたのはいいのですが、この後のことをすっかりと忘れておりました』

 つまり、花冠を手にしたままキンバリーには会えないと言いたいのだろう。
 サディアスとしては、彼女がくれるというのであれば喜んでもらう。

『僕がいただいてもよろしいのでしょうか?』
『ええ、ご迷惑でなければ』
『では、喜んでちょうだいいたします』

 彼がにっこりと微笑むと、彼女も極上の笑顔で返す。そして、ぽふっとサディアスの頭に花冠をのせた。

『サディアス様には、冠が似合いますね。こちらに、わたくしの力を付与しましたので、数年は枯れることなくこのままの状態を保つと思います』
『聖なる力ですか?』
『そう呼ばれているかもしれません』



 あのときラティアーナからもらった花冠は、今でも枯れることなくサディアスの机の上に飾られている。
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