だから聖女はいなくなった
「……ラッティ、……リビー」

 遠くからそんな二人を呼ぶ声が聞こえてくる。大きく手を振り、傾く太陽を背にしてこちらに向かって走ってきている。

「あ、カメロンだ」

 リビーと呼ばれた女の子も、つないでいないほうの手を大きく振った。

 カメロンは二人の前に立つと、両手を太ももについてはぁはぁと息を整える。

「カメロン、疲れてる」

 リビーがきゃきゃっと笑う。

「もう。どこから走ってきたの? こんなに汗をかいて」

 ラッティはエプロンのポケットから手巾を取り出して、彼の額に浮かんでいる汗を拭く。明るい茶色の前髪が、ぺたっと肌に張りついていた。

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