だから聖女はいなくなった
だから彼女と結ばれた

1.

 茜色に染まりつつある空を見上げる。
 遠くからはガランガランという鈴の音と牛のなき声が聞こえてきた。

「そろそろ、帰りましょうね」
「えぇ? ラッティ、もうちょっと遊ぼうよ」

 立ち上がろうとする彼女のスカートを、幼い女の子がつかみ、つんつんと引っ張る。もう少し、ここに座っていてという意味である。

「でも、これ以上遅くなったらおうちの人も心配するでしょう?」

 むぅと女の子が唇を尖らせたので、彼女はその子の頭に、今作った花冠をぽふっとのせた。

「似合うわ、お姫様」

 お姫様と言われ、幼子も気分がよくなったのだろう。笑みを浮かべ、すっと立ち上がる。

「ラッティ。明日も遊んでくれる?」
「えぇ。明日は天気が悪いみたいだから、おうちの中でご本を読みましょう。でも明日は、ミシェルとエミリーも一緒なの」
「そんなぁ。ラッティを独り占めできない」

 女の子はまたむむっと唇を尖らせ、手をつないできた。

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