だから聖女はいなくなった
『お父さん、どうしたの?』

 ラッティが尋ねると『あいつらは、あいつらは……』と消え入るような声で呟いている。
 あいつらが神官たちを指すのだろうと、ラッティは思っていたが、それ以上、父親へ問い質そうとはしなかった。
 そんな父親の様子が心配ではあったが、その日はラッティもいつもと同じようにやり過ごす。

 次の日の朝は、早くからカメロンが家にやってきた。

『おはよう、カメロン。今日は早いのね』
『おはよう、ラッティ。おじさんはいる?』
『ええ。いるわよ。だけど、ちょっと寝ぼけてるみたい』

 ラッティの言葉通り、ソファに座っていた父親はぼんやりとしていた。

『カメロンは、朝ご飯は食べたの?』
『いや。まだだ……。あいつらがいて、落ち着かなくて……』

 カメロンの言うあいつらも、神官たちのこと。

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