だから聖女はいなくなった
『だったら、食べていく?』
『いいのか?』

 カメロンは破顔する。それでもすぐに顔を引き締めた。

『あ、いや。今日は、おじさんに話があってきたんだ……』
『じゃ、それが終わってから。私はその間にご飯の用意をしておくね。お父さんもまだだから』

 ラッティはキッチンへと消えていく。
 その間、カメロンはラッティの父親と話を始める。

 キッチンにいるラッティには、彼らの会話がぼそぼそと聞こえていた。ただ、ときどき父親が大声をあげるのが気になっていた。

 ラッティが朝食をダイニングテーブルの上に並べ終え、二人を呼びに行く。

『お父さん……?』

 父親は泣いていた。この状況を見たら、父親を泣かせたのはカメロンだろう。

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