だから聖女はいなくなった
 この場所でサディアスの命を狙う者はいない。
 そう確信したためだ。

「サディアス殿下、こちらが中庭です」

 外へ出た瞬間、さわわわと草木が揺れた。今日は穏やかな風が吹いている。
 風がやみ、中庭で遊んでいる子どもに目を向ける。

「……あっ」

 サディアスは息を呑んだ。

「カメロンもいっしょに遊ぼう」

 こちらに気づいた子どもが、元気に手を振っている。

「カメロン殿。彼女は……」

 サディアスが目を奪われたのは、子どもと一緒に遊んでいる一人の女性。
 晴れた空を思わせるその髪の色。宝石を思わせる翡翠色の瞳。そんな彼女が、黙ってこちらを見つめている。

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