だから聖女はいなくなった
 なぜ、寄付金の件を教えてくれなかったのか。
 なぜ、ドレスの件を説明してくれなかったのか。
 なぜ、聖女を受け入れたのか。

 聞きたいけれど、聞いてはいけないような気がした。
 彼女はもう、聖女ラティアーナではないのだ。

 そんな彼女の手は、二つ目の冠を作り終えた。それを、サディアスの頭にぽふんと載せる。

「やはり、サディアス様には冠が似合いますね」
「これは……僕がいただいてもいいですか? 以前、ラティアーナ様からいただいた花冠は、枯れることなく、僕の机の上に飾ってあります」
「それは、あのときの力のおかげですね。残念ながら、聖女ではないただのラッティが作った花冠は、それほど日持ちはしませんよ?」
「はい。枯れた花冠は土に還します」

 サディアスは寂しげに微笑んだ。
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