だから聖女はいなくなった
「カメロン、ありがとう」
「急にどうした?」

 カメロンは笑いながら、彼女の隣に腰をおろす。

「サディアス様とお話をさせてくれたでしょう?」
「彼が、子どもたちの手紙を渡したいみたいだったからね」
「もう、素直じゃないのね」
「俺は子どもじゃないからね」

 二人は顔を見合わせて、微笑み合う。

 彼女にもう後悔はない。
 サディアスにはすべてを伝えた。彼がこれからどう動くのか。
 そしてアイニスは、聖女の役目を最期まで果たすことができるのか。

 それはもう、聖女でなくなった彼女の知るところではない。
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