最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!
 でも、不信感はまだあったみたい。
 探るような目を向けられた。

「で? どうしてこっちに来てるの? この辺りは僕ら三兄弟の部屋があるところで、限られた人しか来ちゃいけないことになってるんだけど」
「え⁉」

 やっぱり来ちゃいけないところだったんだ。

「迷った? それとも僕らを襲いに来た?」
「へ? 護衛なのに何で襲うの? 迷ったんですけど?」

 なんで襲うなんてことになるのかな? って首をひねると、私の反応が予想外だったのか彼は驚くみたいに瞬きして「そう……」とつぶやいた。

「じゃあ、ついておいで」
「え?」
「リビングルームに行くんだろ? 僕も今から行くところだったんだ」
「あ、はい」

 歩き出した彼の後を私はあわててついて行く。
 無言で歩いていると、カーペットの色が見覚えのある赤に変わってホッとした。

 安心した私はそこでやっと男の子の正体を考える。
 まあ、さっきの青いカーペットの辺りを『僕ら三兄弟の部屋があるところ』って言ったり、私と同じ年の杏くんって人を呼び捨てにしてる時点で分かっちゃったけどね。

「えっと、ありがとうございます。……(しゅう)さん、ですよね?」

 護衛対象である三兄弟の長男、常盤柊で間違いないはずだ。

「そうだよ。まあ、一か月よろしくね」

 顔だけをこっちに向けて、口元に笑みを浮かべてあいさつされる。
 でも、目はやっぱり無感情で全く笑っている様には見えない。

「……よろしくお願いします」

 私はあいさつを返しながら、仲良く出来そうにないなぁって初めてこの依頼に不安を覚えた。
< 10 / 127 >

この作品をシェア

pagetop