最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!
 そうしていると耳元に顔を寄せてきたのか、すぐそばから柊さんの低い声が聞こえた。

「ねえ、君は何者? 人の血をなめるなんて、普通はしない。それにさ、なんか傷が治ってるんだけど……これってどういうことなのかな?」
「っ!?」

 そうだ、ヴァンパイアは吸血した後傷口をなめるとその傷を治してしまうんだった!
 キバを立てて吸血した場合は傷が深いからか(あと)が残っちゃうらしいけれど、今みたいなちょっとした傷ならキレイに治っちゃう。

 っていうか、今のってやっぱり吸血しちゃったってこと?
 もしかして吸血衝動? 流石にちょっと早くない⁉
 まだまだしばらく来ることはないだろうと思っていた吸血衝動に戸惑って、私は上手く誤魔化すことも説明することも出来なかった。

「あ、あの! とりあえず帰りませんか⁉ 運転手さん待たせちゃいます!」

 とりあえず今だけでも逃れたいと思った私はそんな提案をする。
 実際に待たせてしまっているだろうし、あまり遅いと心配させてしまうから。
 それでも今説明しろと言われそうな気がしてビクビクしていると。

「……はぁ、分かったよ。でも後で説明してもらうから」

 そうして、私を覆っていた影が離れて行く。
 ホッとして柊さんを見ると、真剣な目と合った。

「夕食後、僕の部屋に来て。来なかったら僕が君の部屋に行くからね?」
「わ、分かりました」

 うなずいたことで今は解放してくれるらしい。
 一時的とはいえ、なんとかこの場はしのげたみたいでホッとした。
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