星が代わりに泣いてくれるから
「ごめん、セリカ…」

車の中で響く懺悔は誰にも届くことなくひっそりと消えた。
家に着くとあるはずの車庫に車がなかった。嫌な汗が伝う。
もう家の中は真っ暗だった。リビングに明かりをつけても人の気配が感じられない。
いったん落ち着こうと冷蔵庫をあけた。ラップでまかれたおかずはいつもより手が込んでいる。セリカは結婚記念日を覚えていたのだ。そして若干の期待を持ってくれていたことも。

「―――っ」

たまらなくなって、すぐに電話をかけた。
ずっと、ぷるるるるとコール音が響く。ずっと耳にあててやっとコールが終わった。
『…はい』
セリカの声が耳に小さく響く。ほっとしたのも束の間、謝ることもせずに問い詰めてしまう。

『セリカ今どこにいるんだ』
『…』
『聞こえているか』
『…』

彼女は黙ってしまった。違う。心配しているんだ。
考えていることと口に出してしまうことが違い口の中が乾く。
彼女は話そうとしないからその場でくるくると周ったり、椅子に座ったり立ったりを繰り返した。

『あなたも来る?』

来れるのと言いたげな声色だった。挑発的な物言いに噛みつくように返事をする。

『…あぁ』
『じゃあ位置情報を送るから』

送られてきたのは位置情報マップだった。
セリカは隣県の国立天文台のところにいた。
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