星が代わりに泣いてくれるから
そんなレンだからまさかはやい段階でプロポーズをするなんて思ってもなかったし、嬉しかった。渡されたピンクの薔薇の小さなブーケはその時、ドライフラワーにした。
一緒に渡されたダイヤモンドは仕立て屋に行ってリングの形を選んだ。今は婚約指輪は引き出しの奥底にいる。忘れたように暫く見ていないものだった。
「結婚してほしい」
焦れる様に眉を寄せ、不安そうに片膝をついていた。
子犬を思わせる様な湿度の高い視線に胸がどきりと高鳴った。
夜景を見に行こうって山の上まで行って、見晴らしの良いところに車をとめてそのネオンを見下ろした。暖色の淡いぼんやりとしたオレンジが綺麗だと思った。
「いいの私で」
「セリカがいい」
「そう…嬉しい」
あまり表情にでなかっただろうと思う。でもあの時人生の中で一番幸せな瞬間だった。片膝ついたままの彼の手を取って、背中を丸めてキスをした。キスをしたとき、彼の長くて細い中指がぴくりと動いた。そのあと、彼が取ってくれたラグジュアリーなホテルで彼の熱を触って確かめて、熱が冷めないように随分と時間をかけてセックスした。お互いの気持ちをすり合わせる様なそれは愛で溢れていた。