星が代わりに泣いてくれるから
ムードというものが大事な理由はそのあとのセックスが特別なものになる、という事とそのセックスが忘れることができないからにつきるのではないか。
今では身体を合わせることもほとんどなくなってしまったがあの時の夜は容易に思い出せる。手の体温、湿度も。小さなことでも笑っていたし、二人して驚いたり感情も共にしていた。
圧倒的に減った夫婦の会話に感情の起伏なんてものはなかったと思う。探り探りなよそよそしさをもって、その温度感で本心を隠した。
「ちゃんと、話さないといけないわね」
勢いよく出てきたけど、結果これで良かったのかもしれない。
きっと夜遅くに帰ってきて驚いているかもしれないけれど。
私がいないと知って焦るだろうか、心配してくれるだろうか、それともせいせいするのだろうか。
私にとってのレンは―――わからない。
ミクちゃんの旦那のように浮気をしているかも、していないかもわからない。それは私がレンを気にかけれていないからだ。はっきり浮気をしていないとも、しているとも言い切れない。そして信用しきれてもいない。