星が代わりに泣いてくれるから
大きな溜息が思わず漏れる。


レンはどうして私と結婚したいと思ったんだろう。
どういう未来を描きたかったのだろう。

今まで聞く機会はいっぱいあったはずなのに私たちは未来へのすり合わせどころか、今の自分たちのことすら分かり合えていない。


日常が忙しいことにかまけて、向き合ってこなかった。


国立天文台へ行く渋滞などはなかった。たまにちらほら車が向かうくらいだった。真っ暗で街灯も最小限の山道は整備されているが久々の運転に慎重になりながら走らせる。

国立天文台はそう高くない山の山頂にある。そこまで基本車かバス。ただこんな夜遅い時間に向かうとなったら車でしか行けないのだ。

国立天文台の入口の看板が見えて、石で敷き詰められた第一駐車場に車を停めた。
車のエンジンを切り、外に出る。
空気は冬に近づいてきているからかひんやりと寒い。思わず空を見上げる。


「うわぁ…」


都会から少し離れただけだというのに、山頂で街灯もないから星が空にたくさん散りばめられている。藍色の空に小さく星が燃えている。

それもいくつも。流れ星はまだ見えない。けれどセリカにとっては胸がいっぱいになった。その時、携帯電話が震えた。

ブーブーと止まろうとしないバイブレーションに少しばかり緊張する。携帯電話の画面を見るとレンだった。私は直ぐにその画面をスライドで答えることはできなかった。電話に出るまで鳴り続けるようなそのコール音の長さに意を決して電話に出た。
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