友だちでいたいのに

14.あたしたちの恋の幕開け

 あたしは、つないだ手が離れないよう、一生けん命恭司のあとに続きながら。
「ねぇ、恭司。そういえばさ」
「なんだよ。まさか、部屋に忘れモンしたとか?」
「ううん、そうじゃなくて」
「だったらなに?」

「まだ『好き』って言ってないよね? あたしのこと」
 勢いよく走っていた恭司が、ガクッと地面につんのめりそうになる。
「オマエなー。もういちいち言わなくたって分かんだろ、そんくらい!」
 恭司は真っ赤になって、プイッとあたしに顔をそむける。

「だって、どーせならきちんと聞いておきたいんだもん。恭司からの愛の告白」
 えへへへっ、と笑みを浮かべているあたしに、恭司は困り果てたようにひとこと。
「……バカじゃねーの」
「ひどーい! 彼女に言う? そんなコトバ~!」
 
 恋人同士になったあたしたちは、にぎやかなケンカでその幕を開けた。 
 
 あのね、恭司。
 あたしたち、いつまでこうやっていっしょにいられるか分からないけど。
 こうやってケンカしたり、笑い合ったりするとりとめのない時間を、少しでも幸せだと思ってくれてるのなら。
 あたしはずっと恭司のそばにいるから。
 
 

 おわり
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