17歳の秋、君と過ごした1泊2日。

着信音が鳴り続くスマホを優くんの指が操作する。


綺麗な指。昨日わたしが繋いだ手。


思い出すと心臓が高鳴りだす。


ほんとこれ心臓に悪い...。


そう思った瞬間。




ーーーあ。




心臓がドクンと嫌な音を立てた。


さっきまでのドキドキとは違うドキドキに支配される。





ーーー画面、見えちゃった、かも。






ーーー『海』って書いてあった...?




見るつもりなんてなかった、見たくなかった。


心臓の音が全身に響いていてうるさい。


すると、いきなり立ち上がる優くん。


え...?


わたしの脳内で、昨日聞いた女の子の話が再生される。


他の女の子のところに行っちゃうの?


「待ってて」っていうあの言葉は嘘だったの?




ーーーやだ。




いやだ。行かないで。




「優くん!」




気づくとわたしも立ち上がり、優くんの手をギュッと掴んで名前を呼んでいた。


「っ、いやだ」


「...みゆ?」


「行かないで」


「え?僕どこにも行か」


「わたしの方が優くんのこと好きだからっ、お願いだから、他の女の子のところに行かないで...!」


わたしは優くんの声を遮るように言葉を紡ぐ。


ーーー告白、しちゃった...。


勢いに任せて言ったとはいえ、さすがに勢いに任せすぎたかな。


告白したことを自覚した途端、一気に心臓の音が大きくなって顔が熱くなる。


2人の間に流れる静かな時間。


熱くなったほっぺに秋の冷たい風が当たって気持ちいい。


風向きのせいで優くんのバニラが香ってきて、その香りにまたドキッとする。


優くん何も言わないな。


ーーー言わなきゃよかったかな。


そう思った時、小さく声が聞こえた。


「ずるいよね、みゆって」


え?


優くんの言葉が理解できなくて、わたしはゆっくりと優くんと目を合わせる。


「みゆ」


「...へ?」


名前を呼ばれて優くんを見ると。


「ついてきて」


わたしの手を掴んだ優くんは歩き出した。
< 27 / 32 >

この作品をシェア

pagetop