17歳の秋、君と過ごした1泊2日。
そういや今からどこに行くんだっけ?


下を向いてパンフレットを小さく広げる。


京都の綺麗な街並みを見るのはマストでしょ?


あ、あと、可愛いヘアアクセ買いたいねって桜と話してたから和風な雑貨屋さんにも行きたいな。


でもやっぱ1番は食べ物でしょ!


「んー」


先生にバレないようにスマホを取り出したわたしは、スイーツが載っている色んなページを開いたり閉じたり。


「なにがいいかなぁ…」


そう呟いたとたん、大好きな声が脳内に甘く響く。


「僕、抹茶好きだよ」


ただの独り言だったのに独り言じゃなくなった。


「好きだよ、抹茶」


後ろから、もういちどわたしの耳元で甘くささやく声。


「っ…」


心臓がうるさい。


こんなことをするのなんて1人しかいない。


わたしの反応を楽しんでるだけ。
それだけだってわかってるのに。


わたしにだけ、がいいと思ってしまう。


どうしようもなく好きが溢れる。


「みゆ」


「へっ!?」


あ、やばい。


名前を呼ばれたので、ほぼ反射的に振り返ってしまった。


そこにはわたしのスマホを後ろから覗き込む優くんの顔が。


思ったよりも近い顔の距離にドキドキが止まらない。


「みゆ、さっきから食べ物しか調べてない」


わたしの背中にピッタリとくっつく優くんの身体。


不意に近づいた身体に、優くんの甘いバニラの香水が鼻をかすめる。


あま、い。


その香りがあまりにも優くんに似合っていて、胸の奥がドクンと音を立てる。


わたしの心臓、ドキドキしないで…。
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