致し方ないので、上司お持ち帰りしました
「童貞だとバレない方法」
衝撃的なタイトルに、頭がついてこなかった。
へ? 童貞、だと?
状況が呑み込めないまま、辺りを見渡すと栞が挟まれている本。
開きっぱなしの本など、他にも読みかけと思われる本が散らばっていた。勝手に触れる罪悪感を背負いながら、他の本のタイトルに目を向ける。
「童貞のキミに贈る言葉」
「童貞は人を動かす力を秘めている」
イケメンの部屋には似合わないタイトルの本ばかりだった。
そして一番近くに落ちていた「童貞だとバレない方法」という本におそるおそるふれた。
新品とは言い難い。何回もページを捲られたような使用感を感じる。あちこちにマーカーで印がつけられており、確実に読み込んだ本だということを悟る。
私の胸はドキドキと高鳴っていた。
もしかして、真白さんは……童貞?!
口元が緩んでしまう。童貞の本を手に取り、ニヤけていては完全に変態だ。緩むことをやめない口元を手のひらで隠した。
口角が上がりっぱなしだ。だって仕方ないよ。
運命の人(童貞)と出会えたんだから!