完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!

 タクシーが発進するなり、自責の念が襲ってきていた。
 いらないことしちゃった。今考えたら、安西さんに送ってもらった方がよかったかもしれない。

 っていうか部長の家、どこ?

「部長、ご自宅って……」

 隣を見ると、部長は座席にもたれかかるようになっていた。額に汗までかいてる。

「大丈夫ですか⁉︎」
「ありがとう。助かった」

 部長は息も切れ切れ。どうしよう、水を途中で買った方がいいだろうか。それよりもここからだと兄の医院が近いけど。

 もしかして飲みすぎて気持ち悪いとか?

 そう思って「失礼します」とネクタイを緩める。
 その時、首筋にびっしり赤い湿疹を見つけてしまった。

「わ……! どうしよう! なにこれ」
「薬がなくて、取りに行く予定だったが出張続きで……」
「とにかくどこがかかりつけですか⁉︎ 今からそっちに行きましょう!」
「いつものをもらいたいと伝えてくれ……英雄に」

 部長があえぐように呟く。

「え?」
「君の兄貴だろ。高峰英雄」
「あ、兄⁉ は、はい!」

 まさか部長が兄さんの病院を知っていて、私がその妹だと知ってるなんて思いもしなかった。
 兄からも部長からも全然話題にだって出たことない。

 ――なんで?
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