完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!
 しかし兄の病院であれば近くてよかった。
 タクシーに行き先を告げ、そのまま脇道を10分ほど走ったところで兄の医院につく。

 兄はたいてい急患に備えて、医院に寝泊まりしてて、実際その日も医院から兄の気配がした。私はあわてて戸を開ける。

「兄さん! 助けて! 部長が!」

 白衣を着た兄がこちらを見る。
 確実に私はその姿を見てホッとした。

 これまで兄に“人が良すぎる!”と怒ってたのに。これがやってくる患者さんの気持ちなんだろうと思った。

 兄は慌てもせず、部長の手首を触り、口を開いた。

「大河、休む日を作ってって言ったでしょ」
「仕方ないだろ」

 部長らしくない口調にぎょっとする。
 それに兄が部長を下の名で呼んだことにも。考えてみればさっき部長も、兄の名を呼んでたのでただの医師と患者の関係でないことは容易に想像できた。
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