愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
「真誉!」

彼が咄嗟に身を乗り出し、私の腕を掴む。

ふたりして階段から真っ逆さまになるところを、彼がすかさず手すりに掴まり、なんとか踏みとどまった。まさに間一髪というやつだ。

ふたり分の体重がかかり、手すりがギッと軋むような音を立てる。

「大丈夫か!?」

強い力で引き上げられ、彼の腕の中へ。その瞬間、バスタオルがはらりとはだけ、床へ舞い落ちた。

「だ、だい、じょう、ぶっ……!」

助けてもらえたことを喜ぶべきか。

一糸まとわぬ姿で彼の腕の中にいることを嘆くべきか。

「危なかったな……」

私を抱き支えながら、彼が安堵したように呟く。

「腕、強く引っ張ったけど痛めてないか?」

体はしっかり心配してくれるけど、裸についてはノーコメント。

ちょっとくらい戸惑ってくれてもいいのに。なにも感じていないと伝わってくるのが余計につらい。

「ご、ごめんなさい! 北斗(ほくと)さんこそ大丈夫だった? 怪我はない?」

「俺は大丈夫だ。こっちこそ驚かせてすまない」

そう言って、一応私の体を見ないように目を逸らしながら、落ちたタオルを拾い上げる。

私はタオルを受け取って、すぐさま体に巻き直した。

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