愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
思わず歩調を緩めると、彼が察したかのように息をついた。

「……そいつは、大丈夫なのか?」

「さっきは優しくて真面目な人だった」

「説得力が皆無なんだが」

北斗さんが額に手を当てる。

十倉さんが悪い人というわけではないけれど、交際する気があるのか?と尋ねられると、イエスとは言えないかもしれない。

「……お断りする。好きとか、お付き合いしたいとか、そういうふうに思えそうにないから」

思わせぶりな態度を取るのはよくないということだけは、今回の件からよーく学んだ。

帰ってからゆっくり、謝罪とお断りの返事を打とうと、端末をバッグにしまう。

「焦る必要なんてないんだからな? 真誉はまだ二十四歳なんだ。この先、出会いだってたくさんある」

まるで他人事のように慰めてくれる彼に、胸の奥がじわりと痛む。

たとえこの先、出会いがあったとしても、北斗さん以上に素敵な男性に出会えるとは思えない。

彼の方はどうなのだろう? 結婚したいと思うような女性はいないのだろうか?

「そういえば北斗さんって、恋人とか、結婚とか、あんまり口にしないけれど……」

「考えてないからな」

どこか遠くを見つめたまま、端的に言い放つ。

「気になる女性とか、いないの?」

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